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「心の書」創作書道家 清水竜也さん

自分の書を見る書道家 清水竜也さん

自分の書を見る書道家 清水竜也さん

油や内ルーサイトギャラリーで個展を開催されている創作書道家の清水竜也さんにお話をうかがいました。

はじまりは書道が褒められたことから

清水さんの書道家になる経緯を教えていただけますか。
最初に小学生の頃に近所の習字の塾で教わりまして、その塾の先生に褒められたっていう記憶が僕のなかで、気持ちよかった思い出です。 小学校でちょっとした学校の展覧会とかで代表にしてもらったりとか、なんかうまいねって褒められたりとか、字が綺麗だねとか、よく子供のころから言われて褒められたのは覚えてます。でも小学校卒業と同時に習字塾はやめて、書道に関してはちょっと離れてました。

中学2年生から高校2年生ぐらいまで毎日毎日野球ばかりしていたものの、無気力症候群で悩んで、下ばかりを向いていた時期がありました。 野球がすべてだったのに、大好きな野球も止めざるをえませんでした。高校退学も考えていた私を救ってくれたのが書道でした。高校の3年の時に好きだった野球を辞めた時、たまたま書道部ってのが学校にあったので、 そこに入りました。最後の1年間ぐらいですかね。そこで、ちょっとした賞、お正月の武道館でやる書初め大会で、武道館賞みたいなものをもらって、それで勇気づけられました。

映像関係などいくつかの職業を経験してますが、 20代の半ばぐらいに飲食業界に入って、そこの社長の奥様から、あなたは字が上手だから書道の学校にでも通ってみたらと言われて、そこで書道の学校に通ったんです。働きながら2年間ぐらい。堀野書道学校っていう学校なんですけど、大久保にある学校だったんですけど、 そこに働きながら月2回くらい通いました。
そこでいろんな筆の使い方を習いまして、多分今の形というか、筆の使い方はそこで多少は覚えたと思うんです。2年間で卒業して、それからひとりで休みの日に趣味で書き始めました。

休みの日に趣味として書作して、コンクールなどに応募したりされてたんですね。
しましたね。はい、一応応募してました。ただ、どこの団体にも所属してなかった。
専門学校出て演出家になりたくて映像の世界に入った時に僕挫折したんですけど、いろんな知識があって色々回せないと、器用じゃないといけないと感じてました。それで、僕はただのいち絵描きになるべきじゃないかっていうような、自分でひとりで表現すべきだと漠然とあって、それがたまたま書道っていうものを使って表現したいことになったんだと思うんですよ。

書道家 清水竜也さんの書

趣味で休日書家

脱サラ前はWEB制作など行う広告代理店の営業をされてたそうですが、その間も休日に書作されてたんですね。
そうです。その間もずっと同じような感じでやってました。
広告・WEB制作会社でもう1回チャレンジしたいと考えました。色々人生を積んで大人になった自分が、もう一度そういう制作畑というか、広告をやってみたいって思って、たまたま中途採用で入った会社だったんですけどね。
そこで書に専念したくなりました。本当にもう仕事も辞めて、書一本にするっていう風に、こう心に決めたのは、ちょうど10年ぐらい前です。

どうやったら自分の字が表現できるかなっていうのは常に考えてたんですけど、ある女性に出会って、その方がなんか見える方なんですよね。僕の作品をちょっとインスタで見てもらったんです。
そうしたら、これは入ってる。これは入ってない、これは入ってる、入ってる、入ってる、入ってる、入ってない、入ってないって言って、ざっと僕のインスタに載ってる僕の作品を見て、すごいペースでジャッジしてくれたんです。でその時に、じゃあ何が入ってるってのは、要するにその魂が入ってるか入ってないかっていうことだったんですけど、彼女が言った入ってるのは、どういう時に僕はどういう心境で書いたのかとか、入ってないって言ったのは何が違うのかっていうのを自分なりに考えて精査したんです。その時に、もしかしたらこれかなっていうのが分かりました。

そんなこんなで、初めて個展をやったのが10年以上前なんですけど、初めてやった個展の後、その女性にジャッジしてもらって、こうじゃないかなっていう風に思って、2回目の個展をするまで5年ぐらいあったんですけど、最初に個展を見た人は、えっていう風に驚いてくれて、何があったんですか変わりましたねって言ってくれました。

書道家 清水竜也さんの書

書で感動を与えたい

アートもそうですよね。入ってる入ってないみたいなことで伝わってくるものが必要なんじゃないかなと思うんですよね。
今の話の延長にあるような気がするんですけど、こういう書を目指してるというか、書道家として目指してるようなことはありますか。
感動を与えたいというか。自分自身が感動したいんですよ。感動することが、なんか生きてるっていうか。書を見て、何かちょっとでも心が動いたというか、もちろんいい方向にですけどね、 動いてくれたら最高なんです。その2回目の個展の時に、僕の書を見て、 仏教用語とか、センチメンタルな部分とかもあったかもしれないし、愛についてとか死について感じてもらえたんだと思います。命についてっていうのが結構題名として多いので、それを見た人がなんか涙してくれたんです。僕の前で。僕今涙出てきそうですけど、なんかそれがすごいなんか嬉しくて、今思い出しても感動しそうです。そんな人が1人2人いた時に、ああこれはやるしかないと思ったんです。やるしかない、やりたいなって。

やはりその場でダイレクトに伝わってくると全然違うでしょうね。
書作される時、どういうスタイルでやられてるでしょうか。作品に大体文章が添えてあるじゃないですか。その文章が先にあって、じゃあこれを書作してみようっていう感じなんでしょうか。
いえ、例えば その日にあった事件だったり、ニュースだったりとか、1週間前、2週間前の自分の生きてるその生活の中のことであったりとか、そういうことが全部繋がってるわけじゃないですか。書くと思ったら、それまでにあったいろんな出来事だったりを思い起こしたりして、感覚を研ぎ澄ましてるって言うんですかね。自分の中で感覚を研ぎ澄まして、入ってくる情報の中で、その感銘を受けたこと、感動したこと、その気持ちが言葉になるんです。 だから、言葉が先にじゃなくて、思いが、その言葉を生み出してくるっていう感じです。

それで書ができ上がって、それとマッチするような言葉を添えてるのでしょうか。
この言葉って本来はどういう意味なんだろうって調べた時に、それがたまたま仏教用語に繋がったりとか、この個展内の書にも書いてありますけど、生とし生けるもの幸あれっていうような言葉だったりとか、平和であったりとか、宇宙だったりとか、なんかそういう果てしない、意識の世界っていうに言葉にしてます。言葉は、生活してる人間のひとつのはかない命の断片的なものですよね。 負けるなとか、諦めるなとか、そういう儚い命の断片的なものを表現してるとは思ってるんです。
言葉からこの言葉を書こうって思って書いたことないかもしれないです。

ジョギングや筋トレに励んでらっしゃるってことなんですけど、それも書作を意識されてされてのことでしょうか。
全てが全部繋がってるとは思うんですけど、 自分を追い込むんです。自分の体と対峙するのもそうだし。自然の中で走ったりとか、空気感を感じたりとかもそうだし、息が上がるじゃないですか。そんな時に一生懸命にはなってる自分があると思うんですけど、それが書作をする上で、なりふり構わず没頭するっていうところと通じてるし、書作をするための体力作りでもあるんです。子供の頃から運動は好きでずっと続けて、腕立て伏せとかずっと小さい頃からやってるんですけど、ちょっと負荷を与えて自分に何かを課さないと人間としていけないんじゃないかなと思ってます。

書道家 清水竜也さんの書

心を裸にする

裸に近いような服装で書作されるそうですね。
感動させられるのかなって思った時に、感動して自分も感動したいんだけど、何か人を感動させるにはなんだと思った時に自然だと思ったんです。自然って身近であって、でも人が見て気持ちよかったりとか、山の景色を見て感動するじゃないですか。じゃあなんで自然見て感動するんだろうなって考えた時に、こいつら裸なんだって思ったんです。何も飾り気がないし、 何も飾ってないんじゃないかと思って、書作するときに自分も裸になる。心を全部裸にして書けば、もしかしたら感動させる表現ができるんじゃないかなって思ったんです。

脱ぎ捨てた時に、じゃ何が残るかっていうとです。むき出しの生まれたままの姿に、主に心が裸になった時に何が生まれるかっていうことだと考えてます。でも疲れるんですよね。そのためにはやっぱり体も多少は鍛えないといけない。精神的にも。
書作するまで、僕書くまでに時間がかかります。入れない時は2時間も3時間もずっとお酒飲みながらとか、4時間5時間経って1本も線が書けないでそのまま終わるってこともあります。そのくらい入ったらもう1発勝負なんです。1つのその文字に対して2枚か3枚ぐらい書ける時もある。そうすると、そこからまた派生していろんな言葉が出てくる時もあります。

PROFILE

1968年千葉県出身(現在は練馬区在住)

受賞歴 抜粋
平成12年8月20日 第五回埼玉県書道芸術展 産経新聞社賞受賞
平成14年7月21日 第7回埼玉県書道芸術展 審査員特別賞受賞
平成15年11月9日 墨アートロマン協会展覧会 アイデア賞受賞
平成15年1月1日 埼玉書道芸術連盟より委員及び委員を委託される
平成15年7月29日 第20回産経国際書展 入選
平成16年7月27日 第21回産経国際書展 入選
その他個展開催多数

※軽井沢町 信濃追分文化磁場油や内 ルーサイトギャラリーにて毎年6月頃個展開催中

書道家 清水竜也さんの書

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